日本からの声:梶谷風音さんインタビュー
Women on Webは、日本からも多くのリクエストを受けます。日本の状況をよりよく理解するため、2021年12月15日、風音さんをインタビューしました。梶谷風音さんは生まれも育ちも日本。日本の女性が安心して自分のことを決定できるよう、現在複数の署名運動を繰り広げています。
Women on Web は日本から多くのリクエストを受けます。日本の状況を理解するため、2021年12月15日Women on Webは風音さんをインタビューしました。
生まれも育ちも日本である風音さん。日本を、女性が安心して自分自身の選択をできる国にしたいと願っています。風音さんは、幼い頃から女性が抑圧されていることに疑問を抱いていました。通訳という職業を持ちながら、中絶の際に要求される配偶者同意(第三者同意)廃止を求め、署名運動を開始しました。また、もっと安全な中絶をアクション(Action for Safe Abortion Japan: ASAJ)*のメンバーとして、日本の女性が、入院の必要なく適正価格で中絶薬を入手できるよう政府に要求し、署名運動を展開しています。署名運動は日本語と英語で行われています。(アマリア プリ ハンダヤニ)
何がきっかけで活動家になったのか、あなたご自身のことをお話しください。
自分が成長する過程で、自分の家族の中で男達がどのように振る舞うかを目にしてきました。私の父は抑圧的でしたが、どこの家庭も同じだと思っていました。結婚すると女が姓を変えなければならないとか、夫の故郷にまでついて行き、夫の家族の世話をするなどということも全く理解できませんでした。これでは、女は情緒的にも身体的にも疎外されると思いますし、女達にとってフェアだとは全く思えません。これらが、私が4歳の時に心に抱いた疑問です。もう少し大きくなると、学校教育の中で、自分自身が望んでいるいないに関わらず「あなた達の身体は、将来男性と一緒になり母親になる準備をしているのよ」などと言われました。学校では、将来私は男性と結婚し、子供を産み育てるのだ、と言われました。でも、そう言われても、母親にならなければならないわけではないし、自分は必ずしも母親になることを選ばないだろう、と分かっていました。そういうことがあって、この社会の価値観に疑問を持ち始めたのです。
日本に住む女として、日本の様々な状況や規則は自分に対抗するものです。友人たちや、私が知らない人でも、その人が抑圧されずに自分らしくいられることを選べるよう、そして、女の選択を獲得できるよう、なんでも行動を起こしてきました。しかし、日本に住んでいる女というのは、何をするにも配偶者の男の同意が必要なんです。中絶、不妊手術を受けるためにも、時には、分娩のための麻酔の使用にさえも夫の許可が要求されるんです。子供を欲しくないから不妊手術を希望すると、医師は「まず結婚し、国のために子供を数人持ってから夫の承諾を得て不妊手術の手続きを始めたらどうか」と話し始める始末です。
日本での中絶へのアクセスの様子をお話しください。
正直言って、現状はとても難しいと言えます。多くの医師は、いまだに子宮内容掻爬術(子宮頸管を広げて子宮の子宮内膜をキュレットでかき取る手術方法)で中絶を行っており、女性が健康を損なう可能性もあります。搔爬法よりは比較的安全な吸引法で中絶を行う医師もいますが、通常、値段が高くなります。日本の中絶はとても高額で、かつ、女性が中絶をするために、法律は配偶者である男性からの中絶同意・許可を必要とします。これは、結婚していなくても、恋人・元恋人、あるいは、性犯罪者からの同意を求められる場合もある、と言い換えることもできます。日本では、中絶に関して、女性自身の選択よりも、男性の同意の方が大切なのです。この法律は「母体保護法」と呼ばれています。時代遅れの法律ですが、医師たちは男性により法に訴えられ、裁判沙汰になることを恐れているのです。
こんなニュースがありました。ある大学生が妊娠をしましたが、彼女の恋人は、妊娠を知った途端行方をくらましたのです。彼女はすぐに医師を訪ねましたが、医師は、中絶をするには元恋人の同意が必要だというのです。彼女は、元恋人から同意を得るべく探し回りましたが、彼は、彼女との連絡を完全に断ち切っており、連絡を取れませんでした。彼にしてみれば、高額な中絶費用を出したくない、関わりたくない、というところだったのでしょう。どこに行っても中絶をしてもらえず、彼女は、結局、独り公園の公衆トイレで子供を生みました。この話からも、日本では、男性の同意の方が、女性の権利よりも大切であることがわかります。ですから、恐怖に怯えながら、海外から中絶薬を取り寄せたり、配偶者同意の欄に適当な名前を記入して同意を得たことにしているのです。中絶をするからといって、誰もこんなに辛い思いをするべきではないと思います。しかし、この国では、中絶を希望する女達がこんな風に苦しまなければならないのです!
それで署名運動を始めたんですね。署名運動に関してお話ししてください。
私は、もっと安全な中絶をアクション(ASAJ)のメンバーですが、数ヶ月前、会の協力を得て、中絶の条件である配偶者同意の廃止を求める署名運動を始めました。これが最初の署名運動です。多くの方から「日本の状況がこんなに悪いとは知らなかった」という声が寄せられました。 私は、日本の現実を伝えたいだけなのです。日本では、女性のニーズや権利は男性に許可されなければならないのです。日本で女であるということは、常にこのような脅威にさらされているということなのです。女の人生は、法律や男に壊されるかもしれない。だから、何をするにもいったん立ち止まって考えなければならないのです。だから皆さんにも、「これはおかしい、間違っている」と思うことがあれば是非声を出してもらいたいです。
約5万人の署名が集まりました。また、署名運動の内容は、韓国語・フランス語・スペイン語などに訳されるなど、世界中の人々が運動に協力してくれました。多くの方々の協力のおかげで、日本の状況を海外にも知らせることができました。日本に来たこともない方々や、会ったこともない方々が協力してくれることには感動しました。感謝に堪えません。私は、日本の女性がおかれているおぞましく虐待的な状況を知らしめたかったのです。世界が私を支持してくれれば、この国を変えることができます。
二つ目の署名運動についてお話しください。
現在、この署名運動は日本語と英語のみで繰り広げられています。三人の活動家と一緒にこの署名運動を起こしました。なるべく早く中絶薬が日本で承認されることを要求しています。しかし、政府・省庁や医師団体は、女性が薬を服用するに当たって入院することを条件にしようとしています。薬を服用するのに入院は必要ありません。さらに、驚くべきことに、中絶薬を、初期妊娠中絶外科手術と同額の10万円に設定しようとまでしているのです。女性搾取です。
他の国々では、中絶薬は決して高価なものではないと私たちは論じました。中絶薬入手のためにこんなに多額のお金を支払う必要などありません。私たちは、女性は、誰の同意もなく、合法的に安全な中絶薬を適正価格で入手できるべきである、ということを要求しています。私たちの署名運動は、女性が中絶薬を使って中絶する際に、入院を強制されず、外科手術と同じ料金を払う必要ではないべきだ、と要求しているのです。そして、配偶者同意の廃止も要求しています。女性が自分の身体のことを決めるのに、第三者の許可を得るなどということを止める時が来たのです。中絶薬は、入手可能で、自宅などで服用できるものです。入院は必要ありません。これは、女性が中絶を受けにくくしようとする悪い戦略です。中絶したことや、中絶することを秘密にしておきたい人もいるわけでしょう?でも、入院が必要になれば、家族に、なぜ家を空けるのか話さなければなりません。入院強制は、経済的な問題だけではなく、プライバシーの問題も含みます。
周りの反応についてお話しください。
これまで多くのメディア、ジャーナリストなどから インタビューを受けました。また、配偶者同意に関して記事も発表しました。子供を生まない権利、搾取されずに適正価格で第三者同意なしの中絶をできる権利などを要求し、国会でミーティングを開きました。仲間の活動家と共に国会を訪ね、海外での中絶薬の値段の紹介をし、海外の状況と考え合わせた時、日本で中絶薬の値段がいくらに設定されるべきか、日本の女達が配偶者同意なしで中絶にアクセスできることをどれだけ必要としているかなどに関して発表をしたこともあります。私自身も、活動家として自分の経験や、困難に直面している他の女性たちのメッセージなどを紹介しました。
他の女性の話を聞いてあげるというのは、とても親切ですね。
今は、互いを結ぶテクノロジーもありますし、例えば医療機関で性的嫌がらせや虐待などを受けたら、ソーシャルメディアで共有できます。多くの女性たちが集まり、協働し、声を上げています。いいことだと思います。
署名運動を始めてからツイッターを発信し始めました。私自身がどのように生きたいか、将来母親になる人としてではなく、子供をもたずに生きていく人間として自分が経験していること、自分の権利だと思うことなどを共有しています。署名上、コメントや自分たちの体験を綴ってくれる人もいます。その中に、虐待のパートナーに妊娠させられ、中絶することができず、シングルマザーになったという体験談も複数ありました。Women on Webなどの海外の団体から中絶薬を取り寄せるための情報を訊ねてくるメッセージもありました。そんな時、私はいつも、Women on Webは安全で信頼できると伝え、安心してもらいます。大変な思いをせず中絶薬を入手できるということは、彼女たちが主体性を以って自分の身体に向き合うことに通じます。誰の同意も受けずに中絶にアクセスできるということは、女性が本来持っている能力をより発揮できるようになること、つまり、エンパワーメントという点においてとても大切だと思います。
あなたの活動にはテクノロジーがとても大切な役割を果たしているようですね。
はい、その通りです。署名運動にしても、特にコロナウィルス危機下においては、テクノロジーを使う方がずっといいということに気がつきました。例えば、どこかの公園に行って署名を集めたりするのは、物凄い労力を要します。オンラインでは、世界中の人々がすぐにアクセスできるので、一秒で1万や5万の署名が集まるんです。もう一つ、オンラインの利点は、誰かが私に相談したいときや、なんらかの情報を提供するとき、相手が私に対して匿名でいられることですね。相手も安心していられます。
これを読んでいる皆さんに最後に一言お願いします。
私は、女性が安全な中絶を選べる世界、子供を持たないことを選べる世界を作りたいのです。これは、人権の問題であって、一部の富裕層が贅沢で選べるような選択であるべきではありません。もし、私の国がそうであるように、国があなたを守ってくれず、あなたの権利を剥奪しようとするなら、お互いを助け合わなければならないと思います。私も、有益な情報を共有しあったり、自分たちの権利は何であるのか話し合ったりして、助け合ってきました。